レイヤーな世界
2013年7月18日 18:29
またまた、フリーペーパー・シリーズの入稿が遅れてすみません。
最近あれやこれやと読んだり考えているうちに、わけが分からなくなってしまいました(笑)
その最近読んだ中で「レイヤー化する世界」佐々木俊尚著(NHK出版新書)はなかなか面白かったです。
中世、近代は国民国家や民主主義を生んだが、レイヤー化(重層化した境界のない世界)していく現代、未来では帰属も一つではなくウチとソトが崩壊し、国家や民主主義も終わるか変質するという、興味深い話でした。
今後普及して行くであろう電気自動車はエンジンじゃなくてモーターなので、従来の職人芸的で面倒な組み合わせすり合わせが不要で(つまり人があまりいらない)、優秀で精緻なOSソフトがあれば良いと。なるほどグーグルが参入する意味も良くわかりました。大きなスマホを作るようなもんですもんね。人と車の移動もデーターとして蒐集しまくるのはまたまた途方も無い未知の情報が得られるわけです。
ご存知の方も多いと思いますが、お掃除ロボットのルンバを造った工学者が新たに世に送り出した軽作業ロボの「バクスター」は価格200万、重量75キロ、先輩から手取られ教わることですぐに作業が出来るそうです。殆ど今、工場で従事してる人(年収、体重、習得方法)と変わらないわけです。もちろん食事休憩も休日もいりません。これに先の電気自動車工場に多くの人が必要ないことや、賃金のまだまだ安い国々が加われば、今まで工場があった国でそれが戻ったとしても、製造業が新たに人の雇用や所得を増やして行くのは、今後まーありえないと。
また、アフリカは水や電話回線などの基本的なインフラの普及はまだまだなのに、携帯やスマフォだけはものすごい勢いで普及しているそうです。こちらから見ればこの奇妙な発展は、従来では考えられない新しいスタンダードを産み出す可能性があるというのは面白い指摘でした。すでに携帯が銀行の換わりをするようなサービスが急速に広がっているとも聞きます。
3Dプリンターなどの新しい技術もともなって、大量生産の時代から昔、教科書で習った家内制工業の世界に逆戻りもありますと。ただ、自分的には某コンビニのPB商品は買いまくってるので、今でも大量生産品もありがたく重宝していますw
こんな従来のシステムを超えた新たなレイヤーが出てきたりする、あまりにも大きな変化もインターネットも普通に思ったよりも全然早く普及したのを思い起こすと、これらの予測も案外早いものかもしれません。
新自由主義も社会民主主義もなんだかノーフューチャな感じだなーという昨今で、数々のレイヤーに立ち位置を拡げて、その基盤を作るグーグルやアマゾンのような超国家企業の作る場と共犯せよ(まー簡単に言うと、もう乗っかっちゃえ)というのはある程度、納得しちゃいました。
ただ乗っかれというのではなく、プリズム(あの諜報システムでは無くて)という概念をもってという部分もあるのですが、その辺はご興味のある方は是非、この本をご覧下さい。いずれにしろ「レイヤー」というキーワードが現代から未来を考えるとき重要だというのはとても腑に落ちました。
そもそもなぜ書店でこの本を手に取ったかというと、昔33で扱っていたアシュラファーストというブランドを思い起こしたからでした。アートディレクターの山田大補氏はレイヤーという概念と技術を最も早く印象的にTシャツというアイテムを使って表現したグラフィック・デザイナーでした。
MACのフォトショップのレイヤーを駆使して作られたTシャツはそのグラフィック上のみならず、プリント製法(シルクスクリーンや転写プリント等を併用して)までも使ってレイヤーを表現しました。
当時その概念を熱く語ってくれましたが僕のような凡人にはいまいち、ピンときませんでした。それってソフトウェアの話?的な。しかし彼は今のような未来のイメージを感覚でわかっていて表現したのだと思います。
デザインにも色々なスタンスがありますが、まさに彼は未来を見据えたグラフィックデザインで、その兆しを早くも見せてくれていたのでしょう。デザインにはそんな力があると、まざまざと今思い知らされます。
遅まきながら33もいろいろ経て、少しスローダウンしている感もありますが、新たなレイヤーを作れればと思っています。まだまだ前準備している段階ですが...。
「未来を感じろ!」とワクワクする熱いメッセージを視覚化して伝えてくれた天才デザイナー山田氏の他界から、あと一ヶ月余りで10回忌を迎えます。
今の彼ならどんな次のビジュアルを見せてくれたでしょう。
Text by Akira Aratake / next33
*山田大補氏に関しては、デザイナーの丸橋圭太郎氏が以前のこのブログに寄稿してくれた中でも触れています。ご興味のある方はこちらもご覧下さい。