shop33とその後の物語 第一回 小倉拓也vol.3

2018年7月28日 17:42

 

小倉拓也氏との対談の最終回になります。
音楽とのつながりや90年代カルチャー、そして日本酒にまつわるお話などをお伺いしております!
前回の対談の様子ははこちら

◆33と音楽
荒武 90年代後半になると色々様変わりしてきたよね。Rainbow2000とかFuji Rockとかも出てきたし。

小倉 Rainbow2000って何年くらいでしたっけ?

荒武 95年かな。その前にNatural Highってイベントが有ったんだよね。Frogman Recordsが主催で、Derrick Mayを呼んで。ただ、オールナイトのイベントではなかったんだよね。だからオールナイトイベントとしてはやっぱり日本ではRainbow2000が先駆けになるのかな。Rainbow2000は行った?

小倉 行きましたよ!Orbitalがライブでよくかけてた作業用のメガネライトなんか無意味にかけて(笑)。Underworldから細野さんまで豪華面子、でしたよね。


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荒武 あれは語り継がれるイベントだよね。ちょうどTrainspottingがあってUnderworldがチャート1位になって、そのタイミングで来日だったからね。その後にFuji Rockだもんね。初回からAphex Twinも出てたり、フェスも大型化していったよね。

小倉 33もイベント良くやってましたよね。渋谷Caveのイベントも行きましたし。

荒武 Caveでは、「マンチェスターナイト」っていうイベントもやってたなー。ブリッジ(bridge)っていうカジヒデキ氏がボーカルをやってた渋谷系の元祖みたいなバンドと一緒にやって。めちゃくちゃ人が入ったし。フリッパーズギターも来て。それが94年くらい。吉祥寺でもSound Tracksっていうイベントも2回もやってて、来てた?

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小倉 行きましたよ!田中フミヤさんも来てましたよね。

荒武 そうそう。Hubを2店舗借りてやったかな。片方はジャングルかけて。

小倉 ビジュアルを森本さんが作ってましたよね。

荒武 森本さんのそのイベント用の映像も流す予定だったんだけど、全然作ってなくてさ(笑)。忙しい人だからそれはそれで仕方ないんだけど。同時に「3月のライオン」っていうインディーズ映画も流したり、将棋の方ではなくて(笑)。その時はフォルクローレのバンドを呼んで、その後に田中フミヤさんだったかな。当時ってクラブイベントってあんまりやっている人がいなくて、特に吉祥寺ではね。だから面白かったんですよね。

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小倉 そうですよね。吉祥寺だとドロップ(旧ハッスル)とかくらいでしたもんね。ゴリゴリのテクノって感じではなかったですけど。

荒武 そうそう。元々はニューウェーブで。

小倉 Kitchenとか東京ゲーマーズナイトグルーブ(TGNG)とかのイベントありましたね。


◆新しい「サブカル」、「オタク」

荒武 TGNGといえば、今ってゲーマーってすごい地位が上がってるというか、市民権を得てきてるというか、変わってきてて。NHKで番組組まれてたりしてるしさ。

小倉 僕も観ました!もうスポーツの域ですもんね。eスポーツとしてオリンピックの種目にもなるかもって話もあるし。

荒武 でもそういった流れを当時の大ちゃん(佐藤大さん)なんかは予想してたんだろうね。TGNGを始めた頃なんかはゲームのイベントはお金にならないというか。ゲームなんかやってって言われて蔑まされるようなものだったからね。そういった理想みたいなものが今では現実化してて。20年位前にイメージしてたものが現実になってきてるんだよね。

小倉 昔はオタクって市民権を得てなかったですし、お金になるものではなかったじゃないですか。ただの個人趣味に走ってる気持ち悪い奴らという認識されてましたけど、それが今ではオーバーグラウンドに出てお金稼げるようになってますよね。むしろそういったものが面白いって風潮に…。


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小倉 33もオタクを作ってましたよね。いや、作ってたというか、オタクに対して優しかった。

荒武 そうですね、オタクフレンドリーです(笑)!今みたいに、オタクってポップというかメジャーじゃなくて、オタクって言うと排除される人間という見られ方をしてて。それはいかんだろうとは思ってた。お互いマイナー志向っていう点で共通点があったのかもしれないね。でも何となく、将来的にはそういったものがオーバーグラウンドに出ていくんだろうなというのは何となく考えてた。ダンスミュージックだって正にオタクが聴くような音楽だったのが、今ではEDMに分派しているわけで(笑)。行き過ぎてしまった人はゴアトランスとか、新しい境地に進んでいってしまったけど(笑)。

小倉 当時はSEGAのニット被って、Anarchic(Anarchic Adjustment)のAKIRAのTシャツ着て、RISING HIGHのレコードバック持って、もうまとまりの無い気持ち悪いオタクでしたよ(笑)。


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荒武 そういう人、LIQUIDROOMにたくさんいたよね(笑)。LIQUIDROOMでデリック・メイのイベントに行った時に会場は満員だったんだけど、ほとんどのお客さんが33で売ってたTシャツやキャップを着けてたことがあって、有り難いというかスゲーって売った当人が思ってた(笑)。

小倉 やっぱりオタク養成所だったんですね(笑)。でも、みんな33を通してアイデンティティというか自分を確立してたんだと思いますよ。学校とか職場でうだつのあがらないやつが、33の商品を買って着ることによって盛り上がったり、戦闘服みたいな感じで(笑)。やっぱり33には、音楽とかデザインとかだけじゃないものが詰まってたんですよね。カルチャーを生むためにはどうしたらいいのかっていう方法論というかスタートの仕方を見せてくれてたと思うんですよね。だからあらさんは犠牲になってくれてたんですよね(笑)。

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荒武 笑。まあ土台になってたということは嬉しいよね。でも俺だって大友さんとか森本さんとかそういったすごいクリエーターの方々にモノを発想するヒントっていうか刺激を吉祥寺で頂いてたよね。お店の形態としては昔、パイドパイパーハウスって伝説的なレコード屋が南青山の骨董通りにあって、学生の頃からよく通ってて。とてもカッコいい素敵なお店で、店主の方の自伝本とか読んで将来こんな事できたらいいなと漠然と考えていたりしたね。本とか映画だとニューロマンサーとかブレードランナーとか、やはり国内だと両村上氏の世界にどっぷりと浸かってたね。もともと子供の頃からゴジラとかスター・トレックとかSFモノが大好きだったし(笑)本当に色々なものに影響されてたと思うよ。

小倉 忙しい時代ですよねー。色々咲き狂ってた時代ですよね。でも今は落ち着いてる感じはありますよね。先人が色々と生み出してる中で、新しい発見をしていくだけでも難しいし。

荒武 こうやって過去を振り返るのもいいのか悪いのかわからないんだけど、過去を振り返りつつ未来を見ていければなと。

小倉 さっきも言いましたけど、リバイバルが流行ってて、若い人たちは昔のものを面白がっていてるじゃないですか。

荒武 経験したことがないからね。だから90年代のものとかが逆に新鮮には映るんだよね。歴史はある程度反芻というか、繰り返すからね。


◆90年代と今
小倉 その新しく開拓するって事に関してなんですけど、今33にこんなやつが来たら面白いとかっています?ジャンル問わず。

荒武 例えばYoutubeとかプロゲーマーなんかは表に出てしまってるから追っかけてもしょうがないし、どうだろうな。逆に日本酒をつけにこの前フランスに行った時にそういったヒントはあった?

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小倉 ヒントと言うか、そこがハードミニマルな日々を過ごしちゃってる東京では感じにくいところで。カイ燗作ったときもそうでしたけど、なんか分泌されて脳内覚醒感を経てすんごい多幸感の中で行動欲が強くなる感じは有りましたね。少しフランスに行って面白いというか変だなと思ったのは、日本酒を造る事の技法や呑む事の文化って、江戸時代で既に結構出来上がっちゃってるんですよね。その後は、売る為、伝える為に、その時代に合わせてどうしようとかってところで、所詮補足に過ぎないというか…

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小倉 フランスにも結構な数の日本酒が輸出されてはいるんですけど、殆どが冷酒で提供されていて(燗酒どころか常温って考えすらあまりない)。なおかつワイングラスで飲むのが一般化されつつ有って…それって滅茶苦茶かっちょ良い日本の伝統的な文化からは当然外れてる訳ですよね。単純に。スタイルも良いわ、燗にしたら酒も美味くなるわで、理にかなった素晴らしき伝統的な酒の文化が有るのにそこを輸出しないのは本当に摩訶不思議。らしさみたいなものを、もっとはっきりと輸出したり、伝えた方が日本の為になるのではないかと向こうに行って痛切に感じました。あとは、フランスのマダム達が燗酒を盃で呑む姿が可愛くて個人的に萌えます(笑)。

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荒武 そうだよね、僕も初めてカイ燗に行った時に、日本酒なんてほとんど飲まなかったけど、飲んでみたら美味しくてかなり見直したというか、再発見させてもらったよね。

小倉 でも来てくれる人が、酒の味だけでなく、スタイルや文化に興味を持ってくれるからで。皆様に感謝ですね。

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荒武 カイ燗は店主だったりお店の内装だったり、BGMだったり、そういった部分も寄与してるよね。でも開店当初はKLFの「Chill Out」がかかってて、この店エッジ効いてんなーって驚いたよ(笑)。

小倉 わびさびですね(笑)。

荒武 カイ燗で昔33によく来てくれてたお客さんとも会ったりして。吉祥寺ってなんだかそういう人が多いんだよね。光に集まる虫みたいな(笑)。ここは怪しいぞって言って同じような人たちが集まってきて(笑)。アンダーグラウンドに集まる人達は一定層いて、吉祥寺ってそういう街なんだよね。もちろん他の街にも沢山いるんだろうけど、村のような感じで集まりやすいのか、特色だよね。

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小倉 だいぶ少なくなってきた気もしますけどね。でも以前あらさんが言ってくれたように、居酒屋が最終的なコミュニケーションの場になりつつある気がしますね。特に誰かと話すってわけではないんだけど、そこに行くと落ち着くというか、人の素直な生活の延長とかが感じられるわけじゃないですか。今特に人の生活ってのが感じにくくなってるんで、余計に思いますね。周りの目を気にして生きてる中で、日常でいられるというか、そこに日常とか文化があって。

荒武 新聞の記事で読んだんだけど、今ってすごいクリエイティブっていう言葉がもてはやされていて、独り歩きしているように感じるんだよね。すべてのものをクリエイティブにやろうという風潮とか。でも本来はその前にカルチャーがあって。今は段々と文化の部分がなくなってきてしまっていて。カルチャーって語源はアグリカルチャーからきていて、つまり農業。どんどん耕して生まれていくものだからカルチャーであって、クリエイティブって本来耕して生まれたカルチャーを土台にしていかないといけないんじゃないかな。


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荒武 だから90年代にあって、2000年以降になくなってしまったものなのかなって。一つのきっかけとしてはやっぱりインターネットなんだろうけど。ただ、今でもそういった文化が土台になっているものがあって、いままで遊びだと思われてた産業だったりものだったりにお金が流れていて、所謂ホワイトカラーとは違った仕事っていうのは増えてきているよね。

小倉 そうですね、そういった意味では激動の時代でもあり、分からない時代ですよね。ただ、総じて言えるのは、そういったものを作れる人って徹底的にやってますよね。他人から見たら「大丈夫か?」ってくらい耕してて。


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荒武 そうそう。徹底的にやるとまた違った新しいものが見えてくるんだよね。それで言えば、自分は新しいもの、面白いものを一生懸命探すってことをやってたからこそ、糧になってそれが仕事になったからね。

小倉 そういったカルチャーになり得る事って、こっちが追いついていない部分が沢山あるんでしょうね。その時々にきっと存在はしているんだけど、なんだろ…創造性みたいなものがとぼしくてなかなかたどり着けない。微かに見えたとしても、時代の流れで築き上げられた壁みたいなものが結構大きく残っていると思うので、そこをよじ登ったり破壊したりしてブレイクスルー出来たら違った変化がついて良いですよね。。そういう所で言えば90年代も今も変わらないのかなって思います。んで、そういう考えができるのも90年代に33に触れられたおかげでございます。


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Photographed by Kei Murata
location Cosi Cosi


小倉拓也さんをお迎えしてお届けいたしました「shop33とその後の物語」いかがでしたでしょうか。
shop33の時代から様々な形で関わっていただき、長く吉祥寺を見てきた彼だからこそのお話を沢山聞かせていただきました。
現在は飲食というフィールドで活躍していますが、時代やフィールドは変わっても昔と変わらずアンテナを張っていて、我々にとっても刺激を受ける対談となりました!


第二回はステロタイプ児玉健一さんをお迎えしてお届け致します。ご期待下さい!
第二回の記事はこちらから。 

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