shop33とその後の物語 第三回 森本晃司 vol.3

2018年11月 4日 12:00

森本晃司さんとの対談も今回が最終回となります。ぜひお楽しみください!前回の様子はこちら

◆90年代と現在

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森本  宇宙旅行で思い出したんだけど、最近解けないとされてきた数学の難問を解いたロシアの数学者がいたじゃないですか?その人はその難問を解いた途端、山の中で野人として生きはじめちゃったらしいんだよね。2001年宇宙の旅のように、宇宙に行って新しい何かを見たりすることもあるだろうけど、その数学者のように数学からアプローチして新しい次元に行くってこともできるんだよね。それって料理人は料理人でもあることだろうし、その他の職業でも一緒だと思うんだよね。突き詰めていって目指す頂点は一緒だと思うんだよ。

木原  森本さんはそこの境地を覗いたことはあります?

森本  いやいや、まだまだいけてないですね。でもそこは目指してますよ。それに俺は発明家が好きだから。例えば寺山修司とか、一つの表現方法として映画を使ったりとか文章を使ったりとか、ありとあらゆるものを使って表現を提示するわけじゃない?その方法にとらわれないところが好きで。もちろん一つ一つの表現が突き抜けてるんだけど。「職業は?」って聞かれて、「寺山修司です」って答えるのだって、どれだけ格好いいんだって思うわけ(笑)。

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森本  映画で言えば、アメリカンニューシネマなんかは主人公が最後に死んじゃったりするじゃない?普通は生きて終わるのに(笑)。でもあの死に方が、後ろ向きに倒れるんじゃなくて前向きに突っ込んで倒れるっていうのが、真っ先に生きたことを表現してて。そういう表現の発明みたいなのが好きなんですよ。そしてあの辺りから表現がいろいろと変わっていって。でも最近はやっぱりそういう危うさとか、怪しさとか、本当に少なくなってきてるよね。

荒武   そうなんですよね。吉祥寺も個性が薄れてきたというか、他の街とおんなじようになってきっちゃってますよね。

森本  そうなんですよ。それって日本全体で言えることで、自分のところを恥かしいと思ってるんですよね。外国人とか、外から来た人はそういう部分を見たいわけで。でも「こんなところは見ないで。恥ずかしいから隠して」って言ってて。そうじゃないんですよ。世の中と違うから皆興味を持っているのに、自分たちが使うべき武器を自らで捨てちゃってるんですよね。それで他の街と同じになっていって。誰もそんなところに興味も持たないし、恐怖しないんですよ。そうやって整えられたところって遊び場じゃなくなっちゃってるんですよ。

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木原  それこそ90年代の産業革命的に状況や時代が二転三転して変わっていくような感じって僕は体験したことがないんですよ。もちろん、90年代と同じ体験をする必要もないし、今が悪いってわけではないんですが、でもじゃあ90年代のワクワクというか、革命的というか、新しいものがどんどん出てくる感じが今あるのかというと、なかなか感じられないんですよね。それって、時代の流れ違うからなのか、個人個人のパワーが足りないのか、なんだと思います?

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森本  個人というよりも、時代の流れかな。今は拡散してるよね。一人のリーダーが沢山の人を引っ張っていくような時代ではなくて、色んな所に小さく塊があるから大きな流れが出来づらいんだと思う。でもその小さな塊一つ一つが濃いんだよね。でもそれって良いところと悪いところが同時にあって、例えば田舎の悪ガキたちの構図で言うと、頭いいやつもいればバカで力持ちもいて、色々な人間が混じりあって遊んでるんだよね。でも都会に来ると、馬鹿な奴は馬鹿なやつで固まって話をしていて、頭がいいやつは頭がいいやつどうしで集まって話をしてるんだよね。

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森本  居心地もいいし、話はまとまりやすいのかもしれないけど、それだと同じ方向しか向けなくなっちゃうわけで。だから本当は違った人間も入らないといけないと思うんですよ。そうしないと視野が狭くなって判断が鈍るので、ものづくりができなくなっちゃうと思うんですよね。蛸壺にハマるというか。まあ、そう言いながらよく飲みに行くお店は一緒だったりして自分も蛸壺にハマってるんだけど(笑)。

荒武  僕もよく飲みに行くお店はいつも一緒ですけど(笑)。でも蛸壺自体は悪いことではないと思ってて、でも同時にハマりすぎるのは良くないとは思います。だから飲みに行くときは何軒は回るようにはしていて、そうするとそれぞれのお店でお客さんが違うじゃないですか。そこで色々な人と話が出来るから、楽しかったんですよね。


◆コミュニティーと発信源

木原  例えばよく話に出てくる南天ってお店はどういう感じだったんですか?

荒武  あそこはね、お子様立入禁止な感じ(笑)

森本  まあ値段もそこそこしたからね(笑)でもあの値段であのクオリティーはすごかったよね。

荒武  僕もよく通ってましたけど、本当にみんなよく居ましたもんねー。

森本  村上さんもよくいたし、山鹿さんとか大友さんは毎日居たしね(笑)。

木原  森本さんってそこの記録持ってるんじゃなかったでしたっけ?

森本  そうそう、二百九十何日連続で通ってた(笑)。でその下の記録が大友さんで、二百七十何日(笑)。だから制作とかがまず南天に探しに来るんだよね(笑)。

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荒武  4℃の社長さんも帰ってこいって呼びに来てましたよね?

森本  もう居場所バレちゃってたから(笑)。

荒武  あの当時は、みんなまず南天に寄るってのが日課でしたよね。

木原  でもそういう意味では今も昔も蛸壺ってあるわけじゃないですか?その違いってなんだと思います?

荒武  昔はその蛸壺自体が外に向けて発信してたよね。例えば吉祥寺でいうと、野口さんが作ったサムタイムとかはジャズを吉祥寺に根付かせたし、ファンクステップなんかは大人のバーとしてかっこいいっていう場所を作ってくれてたし。だから蛸壺に集まってる人たちというより、蛸壺自体の発信がすごかったんだと思う。今もそういったところはあるのかもしれないけど、その辺りが見えづらくなってるよね。その上で蛸壺に籠もってる人が多くなってしまったという。

木原  確かに今は蛸壺が多くてなってきてて、その良い所、悪い所っていうのも理解できるんですけど、それって正しい変化だと思います?それとも良くない傾向だと思います?

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森本  難しい問題だよね(笑)。でも正解はないと思ってて、自分の信じてることをやるしかないんだよね、他の何かがどうこうじゃなくて自分の面白いって思うことをやっていって、それが増えていけばいいと思うんだよ。だから一人一人がそういう意識を持って取り組んでいけば、そういう人が増えていくし、面白くなっていくっていうだけだと思うよ。ただそれには自分だけじゃなくって、他人と影響しあってやるってことが大切なんだよね。だからまだ吉祥寺にも面白いところっていっぱいあって、自分のよく行くようなお店では満席だとあそこのお店美味しいですよとか平気で紹介するんだよね(笑)。だから他のお店とも影響しあってるわけで、自分だけじゃないんですよ。

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森本  でもさっきの荒武さんのコンピューターの話じゃないけど、コンピューターとネットが生まれてからは個人で発信できるようになったじゃない?誰でもない人が発信できるという。あれは大きな革命だよね。今まではそこに少なからず検閲が入ってたけど、今ってそれが垂れ流しじゃないですか。だから個人個人がその情報を読み解く力も必要だし、危険性も孕んだ状態で進んでるよね。ただ、あるジャンルでは小学生が天下を取る日が来るかもしれないし。AKIRAの爆心地の話じゃないけど、今ってどこからでもスタートできて、なんでも出来る時代だと思うんですよ。そういう意味ではすごく面白い時代ですよね。

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◆その後の物語

木原  今昔物語ってよく言ったもので、未来の話について話すのはなかなか難しいと思うんですけど、これからやりたいこととか、今でもまたこうしてみんなで集まれてることについてどう感じます?

森本  そうだね。未来のことがわかったら、それこそノストラダムスになっちゃうから(笑)。でもさっきの話じゃないんだけど、まだ途中だから。でもこうやって気がついたらまたみんな周りにいるわけで、そういう人たちで何か作品を作りたいとは思ってるんで、それを具体的にどうするかは置いといて、遠回りもした気がするけど、これまでの期間って仲間集めの時間だったんだなって思うんだよね。でもそういう戦士たちがいたんだって気がついたから、それを形にしていくってのがこれからやろうと思ってますね。

荒武  そうですよね。キッズリターンじゃないけど、まだまだ途中ですからね(笑)。せっかくの機会なので、吉Tの復刻とかどうですか?

森本  復刻しましょうか!でも前に買ってくれた人たちにも悪いし、リミックス版が良いかな。

荒武  是非お願いします!


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●インタビュー後記

今こうしてインタビューを読み返すと、最初に会って吉Tを作った1995年や2004年の大吉大凶のプロジェクトの成り行きについてもっと話したり聞きたいことがどんどん思いつきます。もう一度最初からインタビュー撮り直せないかな(笑) 。。

特に大吉大凶の店外特大ポスターやフライヤーは今見ても森本晃司節炸裂の作品たちで素晴らしいと思います。特にこのフライヤーというツールは…SNSが無い時代にイベントなどで集客ため最も有効だったツールの一つで、まあ簡単に言うとチラシなんだけど。これを同好の士の集まるレコード屋、服屋やクラブに置いて集客したのです。

それにしても我ながら20年以上前の恥ずかしい容姿がデジタル世紀にアーカイブされてしまったこと自体が "大凶desu" !!
(Akira Aratake)

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Photographed by Kei Murata

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