Shop33とその後の物語 第五回 桂・高向 Vol.2
2019年3月17日 12:00
前回に引き続き、桂さん、高向さんとの対談の様子をお届け致します!Vol.1はこちらより御覧ください。
◆それぞれの出会い(桂編)
荒武 ちょっとこの辺りで我々の出会いの話をしましょうか。まず桂と初めて会ったのは…
桂 私は荒武さんのことは高校生のころから知ってた。
荒武 それは一方的にね(笑)。我々が初めて話をしたのは、忘れもしないロンドンのトッテナム・コート・ロード駅のVirgin Megastoresの前だよね。ロンドンに行ったときに、コーディネーターというか通訳できる人が誰かいないかなってことで弘石くんに相談したら、「荒武さん、丁度いい子がいますよ」って目をキラキラさせながら言ってきて(笑)。それでコンタクトとってやってきたのが、もうすっごい…(笑)
高向 荒武さん、なんか今日一番言葉選んでますね(笑)。
桂 いいですよ、正直に言っていただいて(笑)。
荒武 いやー、本当にねー、なんというか…(笑)。まあ正直に言うと、まず怒ってるんだよね、初対面なのに。俺は仕事の依頼主なのになぜか怒ってて。
桂 あんまり覚えてないんだけど、機嫌が悪かったんじゃないかな(笑)。
荒武 いや、それは俺全然関係なくない(笑)?なんか、「もう早く行きましょう」って感じで。あの弘石くんのキラキラした目で紹介してくれた感じと違って、全然話違うじゃんって(笑)。
高向 それは91年ぐらいですか?
荒武 いや、その時にGIO-GOIに行って初めて買い付けしたはずだから、89年だったはず。その時のインボイスも残ってるし。
桂 でも、そもそもどうやってGIO-GOIを見つけたんだっけって話ですよ。マンチェスターに行って、それでAffleck's Palace辺りでGIO-GOIのTシャツが売ってるのを見つけて、これいいじゃんって盛り上がったのは覚えてるんですけど…
◆90年のイギリス
荒武 今日その頃の写真を持ってきたからちょっと見てみようよ。これが話してたAffleck's Palaceの写真だね。
高向 へー、Affleck's Palaceの写真まで撮ってたんだ。
荒武 意外にマメに撮ってたからね。あの頃は動画も撮ってたし、その動画はミーティングでも見せたじゃん。
高向 あー、ありましたねー!
荒武 それで、ここにGIO-GOIのダンボールがドンと置いてあって、そこに電話番号が書いてあったからこそっと書き写したはず。そうじゃなかったっけ?
桂 そうだっけ、全然覚えてません(笑)。
高向 (笑)。
荒武 ちなみに、この頃の俺は細野晴臣に影響を受けてるんで、シャツインのアロハですよ。ティン・パン・アレーでマンチェスター。
桂 はらいそなんだ(笑)。
高向 どんなタイムギャップなんですか、89年にマンチェスターでティン・パン・アレーって(笑)。
桂 これどこだっけ?
荒武 Third eyeだよ。Tシャツ屋。ここでも買い付けしたよ。でも、桂はあそこは偽物だって言ってた(笑)。でも今見るとおしゃれだよね。
桂 あー、そうですね。言ってる意味はわかります。
荒武 Tシャツがいっぱい並んでるのはEatsern Bloc Records。
桂 あ、そうだねー。Eatsern Bloc Recordsも初めはすごいシャビーだったのに、そのうちブームでお金稼いじゃってフロア広げていったって感じだったよね。
荒武 あ、思い出した!Guiseってお店にGIO-GOIがおいてあって、そこのダンボール箱に書いてあった電話番号を書き写してコンタクトを取ったんだ。あとはArkってお店からもいろいろ買い付けしたんだよね。あ、このMacの横にあるマンガ覚えてる?ロンドンだったかマンチェスターにあったマニアックな漫画屋においてあったSkinってマガジンで…
高向 これはグロい系のやつでしたっけ?
荒武 これはサリドマイド系のやつなんだけど、よく覚えてるね。
高向 以前荒武さんに説明してもらったのを覚えてます。
荒武 手が巨大でみんなにいじめられてる子供が、大人になって化学工場で大殺戮を起こすっていうすごいエグい話なんだけど、発禁になっちゃったんだよね。でも33では5〜10冊くらい入れてて。でもエグい話だし、値段も高いから誰も買わないだろうと思ってたんだよ。でも意外と売れて、いつの間にか最後の一冊になっちゃったんだよね。取っておきたい気持ちもあったから、最後の一冊は上の方に飾ってたんだよね。そしたらクイック・ジャパンの当時の赤井祐一さんっていう編集長が来た時に、それをパッと見て「あれ買っていいですか?」って言ってきて。でも赤井さんは一目置いてたというかリスペクトしてたから、その人が言うんだったらしょうがないかと思って売っちゃったんだよね。でも今考えると自分で買っておけばよかったなーと思って。
高向 桂はこの辺りを仕入れたのは覚えてないの?
荒武 そうそう、これは桂さんのチョイスです。俺は買い付けた当時は良さを理解できてなかったから。
桂 うーん(笑)。でもこういう店はよく遊びに行ってましたからね。
荒武 俺がはっきり覚えてるのは、ラバースーツに二人で入って密閉してキューッと締め付けられるみたいな商品がおいてあるお店で。それでそれを見た桂が「これはすごい!」って言ってて(笑)。でも裁断とか、全部そこのお店で作ってたんだよね。変態というかフェティッシュな。Skin Twoとかの世界ですよね。
桂 そのお店覚えてないんだよねー。でもあの世界ってスタジオとかで少人数がコツコツ作ってる感じの世界だから。でもSkin Twoとかはあの世界ではメジャーな方なんじゃないかな。おそらくね。
荒武 でも桂と行ったお店は相当マニアックなところだったね。場所も外れたところにあって。なんでこんなところに連れてかれるんだろうって。でもそこで買ったラバースーツも結構売れて、結局2,3回行ったんだよね。
桂 なんかマスクを買い付けしたのは覚えてるんだけど、どこで買ったかまでは覚えてないなー。
荒武 でも行ったら行ったでいいお店だったけどね。フェティッシュのセレクトショップって感じで。
桂 今となればそういう世界も珍しくはないんだろうけどね。
◆オールド・コンプトン・ストリート
高向 桂さんとしては、フェティッシュの文脈があって、その後にAmerican Retroなの?
桂 確かAmerican Retroの方が後じゃないかな。
荒武 American Retroで働いてなかったっけ?
桂 うん。半年だったか一年だったか、バイトさせてもらってて。
荒武 それってオールド・コンプトン・ストリートにあったお店?
桂 そうそう。
高向 俺はAmerican Retroはメッセンジャーバックが関わりが多いかな。
荒武 そうだね、あれはうちもよく仕入れててよく売れたねー。WAVEとかでもAmerican Retroのお店出してたりしたもんね。バイトしてたのはいつくらい?
桂 92年くらいかな。
高向 オールド・コンプトン・ストリートって通り自体が、今で言うLGBTの中心地でしたもんね。
桂 ウエストエンドのゲイの中心地と行ったらオールド・コンプトン・ストリートだよね。
高向 でも33も斬新でしたよね。LGBTのファッションやライフスタイルにあるものを輸入して売るお店って、92年の頃は日本にそうなかったと思うし。
桂 33ってそういう意味ではマンチェスター系もだけど、American Retroとかも入れてて不思議だったよね。
荒武 American Retroの商品ってゲイの人達が身につける商品だと思ってたんだけど、店長のスーに「アキラ、うちのお店はゲイショップじゃない。ゲイフレンドリーなショップなんだ。そこはちゃんと理解してくれ。」って言われたんだよね。
高向 確かにわかりますよね。商品自体にはそういう匂いは全くしないし。ショップバックもすごいクラッシーな感じだったし。
荒武 そうだね、ゲイじゃない人でも着てたし。
桂 いやー、そうは言っても着てる人はやっぱりゲイのおしゃれな男の子、女の子が多かったかな(笑)。
高向 ロンドンではそうだっただろうね。
桂 でも所謂おしゃれな位置づけではあったかな。
荒武 そうだよね。当時のiDとかFaceにもAmerican Retroの商品はよく出てた。
桂 だから買いに行ったんじゃない?
荒武 そうそう。それで買いに行ったら、そういうお店でびっくりしたかな。
桂 でも今でもAmerican Retroってブランドはあって、スーのAmerican Retroではないと思うんだけど。Googleで調べるとそういう名前のブランドが出てくるんだよね。イタリアのファクトリーブランドとかそういう感じなんだろうけど。誰かが名前を買ったのか、名前を真似したのか。もう当時のAmerican Retro自体はオールド・コンプトン・ストリートにはないからね。
荒武 当時はロンドンの中でも最先端のストリートって感じだったよね。
桂 そうだね。昔はウエストエンドが何かと中心だったね。今はShoreditchとか、イーストの方に移ってるけど。
荒武 近くにレコード屋もあったよね?
桂 グリーク・ストリートのTracksのことじゃない。
荒武 あー、思い出した!
桂 Tracksって、Tall Paulとかが翻意にしてたレコードショップで、確かTracksの店長がゲイの男の子でTradeにもよく来てたから、TradeのDJとかお客は結構Tracksでレコードを買ってたね。
◆それぞれの出会い(高向編)
桂 高向と私は日本で会ったことってあったっけ?
高向 ほとんど会ってないね。
桂 そうだよね、だから私が日本で遊んでたときには全く会ったことないんだよね。
高向 そうそう。俺が東京に出てきた時に桂は丁度イギリスに行っちゃって、すれ違いだから。
桂 じゃあ初めて会ったのは33絡みなんだね。
高向 僕の中での桂初体験は、僕がマンチェスターに行ったときですよ。Eatsern Bloc Recordsの地下で待ち合わせねって言われて、僕はロンドンにいたから、ロンドンから飛行機で行って、マンチェスター空港からEatsern Bloc Recordsまでタクシーで行こうとしてたら、丁度マンチェスター市内でバイシクル・レースをやってて市内に入れませんってなっちゃって。それで街のハズレに降ろされて、そこからスーツケース転がしながら徒歩でEatsern Bloc Recordsの地下まで行ったんですよ。そしたら二人がターンテーブルでレコード試聴してて「うーん、いいわね。」みたいな感じで(笑)。
荒武 俺もいたの?
桂 だって荒武さんの紹介だもん。
高向 そうそう。3人で待ち合わせでしたから。
桂 その時は仕事は何してたの?Third Earで働いてたのはその後だよね?
高向 その時はEdwin辞めて少し経ったくらいだとと思うんですよね。
桂 そうだそうだ。ジーンズとかいただきましたよね。その節はどうもありがとうございました(笑)。
高向 いやいや(笑)。それでEatsern Bloc Recordsで落ち合った時点で、諸々仕入れ話はあらかた済んでいて、その後にGIO-GOIの事務所に行くって話でGIO-GOIに行ったんですよ。
荒武 一緒に行ったんだっけ?
高向 一応行ったんですけど、少し話をしたら僕と荒武さんはすぐにシェフィールドに行かないといけないってことですぐに出たんですよ。桂とはそこで別れたんじゃなかったかな?
荒武 じゃあ僕と高向くんでThe Designers Republicに行ったのかな?
高向 そうですね。GIO-GOIでシェフィールドに行くって話をしたら、電車で行こうとしてたんですけど、アンソニーがうちの若いのに運転させるって言って、マンチェスターから車でシェフィールドに送ってもらったんですよ。それで僕は初めてThe Designers Republicに行ったんですよね。
荒武 俺はその前に行ってたんだっけ?
高向 行ってたはずです。その時はまだ事務所がワークステーションの前の大きい古いビルの2階でしたよね。上に大きいスローガンが掲げられてるところで。それでThe Designers Republicに行った後にWARPの事務所に行ったんですよ。WARPも古い建物の2階で、そこにエマってスタッフがいたんですよね。
荒武 エマっていたねー。よく覚えてるねー。
高向 その時はエマとシャンテルって二人の女の子が働いてて。シャンテルはMira Calixって名前のアーティストですけど、その時オフィスにいたのはエマだけでしたね。WARPにポスターを買いに来てたんですけど、そしたらエマがおもむろに床下を開けたらポスターが大量に刺さってて。そこから何点か出してくれて仕入れてましたよね。
荒武 Tシャツも一緒に買わなかったっけ?
高向 いや、その時はポスターだけでTシャツは買わなかったんですよね。多分別で行った時に仕入れてたんだと思います。
荒武 The Designers RepublicはWARPのついでに顔だした感じだったんだっけ?
高向 もうすでに予定に入ってたと思います。それで、The Designers Republicの事務所に行った時に丁度SUGIZOさんのジャケットデザインをイアンがやってたんですよね。
荒武 そうだ、そうだ!
桂 The Designers Republicもあの辺でグラフィックデザインをやってて、これかっこいいから会いに行こうって感じで突撃でしたよね。
高向 そうだね。まあ元々WARPのレーベルロゴをThe Designers Republicが作ってるわけだから、そういう繋がりはあったんだけどね。
桂 高向さんはそれからイギリスには何度かいらしてたんですか?
高向 そうですね、何回か行ってますね。
荒武 高向は一人でふらっとほんと良く行ってたよね。毎年行ってたんじゃない?
高向 90年代の最初の方はね。
荒武 それに全財産をかけるみたいな(笑)。
高向 そうそう。バリのお葬式みたいなもんでね(笑)。バリ島の葬式って、全財産をかけてやって、それで次の日からまた新しい人生を始めるっていうね。
桂 ロンドンに行って何を求めてたの?音楽?
高向 そうだね。
荒武 高向はブリティッシュ・ロックも大好きだから。
桂 じゃあギグとかも行ってたの?
高向 そうだね、でも90年代の最初の方はやっぱりクラブのほうが多いね。一応94年くらいはジャズカフェでCorduroyっていうアシッドジャズのバンドのライブで年越ししたり。それも一人で行って。
荒武 一人でってのがすごいよね。あの頃ってそのころ東洋人もあんまりいなかったでしょ?
高向 いないいない(笑)。
桂 でも若いときってこだわりますよね。「私はこれ!」みたいな感じで。自分の知ってる世界しか受け入れないみたいな、でも知ってる世界はすごい掘り下げるみたいなね。でも楽しかったよね。
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Photographed by Kei Murata
Location カイ燗
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