モノクロ写真で撮られた1989年のshop33

2019年3月31日 12:00

33は1981年にレンタル・レコード店として吉祥寺駅南口井の頭通りから南口前に入る細いバス通りの入り口にある雑居ビルの3階でスタートしました。今は一階に「いきなりステーキ」と、30数年にわたり固定客を掴んでいる中古レコード屋があるビルと言えば、そこかとわかる人も多くいるかもしれません。33と同じ3階の反対には、全国から若い女性客がその店のみを目指してやって来るような“Penguin cafe”と呼ばれる名店がありました。2階がカフェで3階がオリジナルの雑貨を売る当時では珍しい複合店舗でした。2階のカフェには大きなお椀でカフェオレを両手で飲むようなフレンチスタイルで内装はとてもシンプル且つ随所にこだわりのある装飾(小物、絵画、観葉植物)、3階のオリジナル雑貨もシンプルなデザインに特徴のあるロゴやイラスト効いたミニマルな商品が数多くあり、今でもコーヒーカップやビールグラスを愛用しています。当時あのバス通り辺りの地図見てキョロキョロしてるお洒落な装いの人は、大概“Penguin cafe”を日本全国からから目指して来たんだとわかりました。そんな人達が店下のバス通りで場所がわからずお店までよく案内してあげたものです。
無印良品より先にミニマリズムと北欧をイメージさせるスタイルが爆発的な人気を全国的に呼び、マガジンハウスのananの最終ページ辺りに掲載されているショップリストの中で、他のブティックやショップの連絡先が全て03(つまり青山や表参道辺りを中心とした23区内)なのに、Penguin cafeだけ唯一市外局番の0422であることが誇りだとオーナーは良くおっしゃっていたそうで同じ吉祥寺村の住民としては単純にカッコいい!と思ったものです。

そんな中、shop33も当初“33 3/1RPM”が正式な店名で、文字通りLPレコード回転数でスタートしたのですがCDにメディアが変わり始めスペースも半分ぐらい空きになったので洋服や雑貨も扱う様になりました。名前も“33 3/1RPM”の3/1RPM部分を取って雑貨など音楽以外の分野も扱う様になったので“shop33”に変更しました、今回の下の写真はその頃の写真です。貸しレコード屋として創業した橋口庄輔さんが、はじめての店舗大改装時にあたって潜水艦の船内をイメージして素案を考えてくれたので、それに僕のニューヨークのSOHOにありそうな架空のアンダーグラウンドなブティックのイメージにAKIRAのSF感を足した壮大無謀なコンセプトのもと出来上がった内装になりました。改装工事中、店内の全てのモノを一時的に店外に出す必要があり、大量のアナログレコードを移動させなければいけませんでした。最初は店のすぐ階上の階段隅を借りるつもりだったのですが、ビルの家主さんに多過ぎて邪魔だとすごい剣幕で怒鳴られ、とにかく平身低頭に謝り何とか屋上の倉庫に置かせてもらったのだけれど、大量のアナログレコードの入ったダンボール箱をバイトのスタッフと殆ど二人ぐらいで2階分上げ下げしていたので、ギックリ腰になり心身ともにぼろぼろになったのは今となっては良い思い出です。。
でも、ずっとリスペクト(と言うより畏怖に近い)していて、会話も殆どしたことの無かった隣のPenguin cafeのオーナーさんが改装当初に33を見に来てくれたらしく、たまたま階段の踊り場でいつものように煙草を吸ってひと息されていた時にいつもの様に挨拶だけで通り過ぎてようとした時に、突然「やるね!」とたった一言いわれた時には全ての苦労が吹っ飛ぶ想いでした。なにしろ全く格の違うと思っていた人からの一言だったからです。

当時はまだヒップホップ・カルチャーとマンチェスタームーブメントが混ざりあった頃で、下のモノクロの写真、右端1番手前のディスプレイには“ハシエンダ”というマンチェスターの伝説のクラブで、ジョイ・ディビジョンやニューオーダー、ハッピー・マンデーズなどを輩出した伝説のレコード・レーベル“Factory Records”が経営していたナイトクラブの金色のポスターが貼ってあり、ここのテレビモニターの下のアパレル雑貨のディスプレイはミック・イタヤ/MIC*ITAYA氏のブランド、“パワー・オブ・ビューティ“をインスタレーション兼販売していました。店内右側はCDレンタル、左側はUSAのストリート・カルチャーのスパイク・リーやパブリック・エネミーのT-SHRTS、UKのストーン・ローゼスやプライマル・スクリームのT-SHRTS、ロンドンのSOUL 2 SOULのウェアー類、そして日本のインディーズ・ブランドといったカオスの中の新しい秩序、正に『ニュー・オーダー』を求めたものでした。せめて志ぐらいは高い方が良いと(笑)。

そんな想いのこもった店の空間と時代を素晴らしい構図で切り取ってもらったのが、あの名歌手の加藤登紀子さんの姪でウチの当初からのお客さんだったフォトグラファーのH.KATO氏のモノクロ写真でした。
(Akira Aratake)


shop33_5-1.pngのサムネール画像

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Photographed by H.KATO
Location けやきビル(shop33)

next thirty three

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