shop33とその後の物語 第六回 Julius Vol.3

2019年8月 4日 12:00

1995年のサードストーン、NU/KE開始直後から人気を競っていたブランドにASYURA FIRST(略称ブランド名、 アシュラ)がいました。彼らとは1999年にN/A33というプロジェクトをNU/KE、ASYURA、shop33の三者で原宿店(民家を二棟借りてそこをshopに改装した、その奥の棟の方を丸々使って)中心にコラボの洋服やイベントを立ち上げたりして33の中でも最も縁の深いブランドの一つになっています。
という訳でASYURA(社名ではステロタイプ)の児玉さんにも後半から参加してもらって、当時のそれぞれの思いや今の考えている事などを語ってもらいました。前回のVol.2はこちら

※以前に行ったN/A33座談会はこちら

NUKE003.jpgのサムネール画像
 

◆N/A33座談会

荒武 ところで、堀川くんと清水くんっていくつだっけ?

堀川 44です。

荒武 じゃあ児玉くんのほうが少し上?

児玉 そうなんです、僕のほうが歳上なんです(笑)。

清水 敬語も使わず生意気言ってすみません(笑)。

児玉 でも堀川くん、優しくなったよね。あの頃は怖かったもん(笑)。
 



加藤 その頃って僕はまだJuliusじゃなかったんで全然知らないんですけど、アパレル業界にずっといたので、アパレルの中でもJuliusって怖いイメージだったんですよ。なんか危ない人たちの集まりみたいな(笑)。真っ黒いし、怖そうですし。

堀川 そんな怖かった?

児玉 怖かったねー。堀川くんの地雷を踏まないようにドキドキしながら(笑)。

清水 でも当時はよく怒ってたよね。俺も怒ってたけど(笑)。



加藤 古平さん(Julius代表)は柔らかいんですけど、ここ二人はそんなに柔らかいイメージはなかったですね、外から見て。

堀川 今は古平くんが一番怒ってるよね(笑)。

清水 でも加藤が一番最初に入った時に、いきなり達郎(堀川)と喧嘩しだしてさ。彼も結構噛み付くタイプなんだよね。曲がったことが大嫌いなタイプで。

堀川 俺は誰かに噛み付いてるところ見て、うちにいいじゃんって思ったんだよね(笑)。

加藤 実際僕が入ったのはJuliusになってからなんで実際には知らないんですけど、NU/KEの話はポイントポイントでよく出てくるんですよ。以前、雑誌の取材で昔の作品を見せてほしいって言われて集めたことがあって。それこそ、シャッフルマスターさんのやつとか、最初のTシャツとか。結構自分たちで持ってなかったりするから、昔のファンの方とかから借りて集めたことがあって。昔の作品って持ってないんですよね。



堀川 そう。だからQ’heyくんからから借りたりとか。

清水 荒武さんにも言われたじゃないですか?33用にTシャツ作ったのが残ってないか?って。それも残ってないんですよね。

児玉 データでも残ってればねー。

清水 NU/KEのはもう捨てちゃったかもしれない。(ステロタイプは)残ってる?

児玉 山田大補HDDを残してるよ。ASYURAのサンプルも永久保存してるし。

清水 すごいねー。全部ファミリーセールで売ってしまって(笑)。

加藤 残しておけばいいものって本当はありますよね。でも洋服は大変なんで…。

 それでなくたってうちの事務所はモノがものすごいじゃないですか?だから今の状態で意図的にとっておくものを置くスペースを作るっていうのは難しいですよね。

児玉 今って1シーズンで何型くらい作るの?

堀川 100。

清水 だからサンプルをとっておって基本難しいんだよね。




◆海外展開、NILøS

児玉 この前、清水くんと何年かぶりに飲んだ時にJuliusの海外展開の話を聞いてね。同世代の戦友たちが海外で更なるチャレンジしようとしてて、すごいポジティブなパワーを貰いましたよ。俺も頑張ろって(笑)。

堀川 恥ずかしい(笑)!でもちょっと工場にサンプル出しても、日本と違ってうまくいかないんだよね。そこに関税だ何だもあるし。だから大きな会社みたいに商社かましてとかじゃないとうまくいかないんだよね。だからインディペンデントだとなかなか難しいかな。だから一歩ずつね。だから、そういうことをやりだすと逆に日本のメリットが見えてきて。日本すげーなって(笑)。だから(海外展開は)将来的に。児玉くんは?

児玉 少しずつアジアの仕事を拡げていけたらと考えてるかな。

堀川 やっぱりパワーが有るところせめて行ったほうが面白いよね。今はアジアこそ海外だと思うし。



清水 韓国もめちゃくちゃ面白かったもんね。全然日本より活気あったし。

堀川 そこから貰うものもあるしね。「忘れてたなー」っていうものだったり。

児玉 この前、韓国映像大学の教授と生徒たちがステロタイプの会社見学に来たんだけど、日本のアニメやゲームは韓国でもすごい人気みたいで、ウチの作ってるモノがこんなにも反応あるんだと思って。

堀川 だって日本は神でしょ。

清水 ヨーロッパもすごいでしょ、日本のアニメーション。

児玉 去年からコンテンツ東京っていうビックサイトの展示会に出てるんだけど、海外からの引合も増えてきてるし反応が面白くてね。次は海外の展示会に出てみたいなと思ってる。うちがやってるアニメやゲームのデザインが海外でどこまで評価されるか挑戦してみたいしね。

清水 それ俺たちもちょっと言っててね、これからJuliusも和の感じに持っていこうって話もしてるんだよね。

堀川 日本人だから日本の国産物を持っていかないと馬鹿らしいというか。こっちのセカンドブランド(NILøS)はどっちかっていうとアニメっぽいっていうか、ポップにしてて、それこそジャパニメーションをパッケージしたい。

加藤 そっちはわかりやすいから反応がいいんですよね。

堀川 今Juliusが安定している分、和に振り切って「和パッケージ」で。



児玉 例えばアニメとファッションで新しい組み方できたら、面白いことになりそうな気がする。

堀川 NILøSだったらなんでもいいよ。

児玉 うまくいけば大きな市場があると思うんだよね。

堀川 Juliusだったらなしだけど、NILøSだったら例えばアイドルもいいし。どっちかって言うと地下アイドル(笑)。地下アイドルだったらウェルカム。でも地下アイドルって今海外では結構やばいんだよね。日本ではアンダーグラウンドでも海外ではメジャーっていうのは全然あり得るし。今海外のオタクでASYURAっぽいグラフィックが相当きてるんだよ(笑)。

児玉 もう一回ASYURAのデータ持ってきてやろうかな(笑)。

堀川 買い取りたい(笑)。



堀川 なんか面白いアイドルがいたらさ、一緒にやろうよ。

児玉 堀川くんや清水くんたちってアニメとかゲームに全然興味ないと思ってたから。そう言ってもらえると嬉しい。また何か一緒にやりたいね。

堀川 ちゃんと変なやつね。例えばきゃりーぱみゅぱみゅの最初みたいな。

清水 Juliusはストイックに何も受け付けずにやってるから、NILøSは結構オープンにやったら可能性を感じるよね。

堀川 なんでもアリで。

児玉 アニソンや秋葉原系の人たちのクラブやLIVEシーンも熱くて、最近仕事の関係で色々なアニメやゲームIPのイベントとかアイドルのLIVEとか行く機会があるんだけど、なんか90年代に似た感じでシーンが盛り上がってんだよね。

堀川 すごいよ。ヴェイパーウェイヴって言うんだけど、世界中で日本の音源をめちゃくちゃ探してて。80年代の日本のアイドルのイケてるプロデューサーの音源をめちゃくちゃ掘ってて。ドイツのクラブでもかかるんだよね。

加藤 80年代のアイドルって例えば誰なんですか?

堀川 斉藤由貴とか。斉藤由貴の中でも色々あるんだけど。それをダブにすんの。それをコラージュしたアーティストをBjörkがピックアップするの。今、日本の80年代のアンダーグラウンド、アンダーグラウンドというかポップというか、微妙な感じが受けてて。

児玉 これからすごいスピード感で世の中が変わっていくと思うのね。若者たちの感覚や価値観とかも我々の時代とは少し変わってきてると感じるし、最低限のアンテナは貼っておかないとなって思ってる。

堀川 変わらない部分でJuliusは本質的な変わらないことをやりたくて。でもチャラチャラした趣味みたいな今のポップに合わせたことをNILøSでやろうかなと思って。それはそれで楽しいじゃん。変わらないことも楽しいから。だから手数は色々持っておこうかなって。

児玉 確かにね。コアな部分は大切にしつつ、時代に合わせて進化させていくのっていいよね。また一緒に何かできたらおもしろくなりそうだね。

清水 ぜひぜひ(笑)。




◆shop33



荒武 最初に33に持ってきたきっかけって何だったんだっけ?

堀川 カリスマショップだったからですね(笑)。

清水 最初は裏原宿の辺りに営業に行ったんですよ。NUMBER (N)INEとかにうちのTシャツ置いてくださいって持っていってんですけど、断られるんですよ(笑)。

児玉 NUMBER (N)INEに持ってったの?さすが、やるなー(笑)!

清水 このお店かっこいいと思ったんで置かせてくださいとか言って(笑)。ふざけんなって感じではないけど、とりあえず帰ってくれって感じで(笑)。

堀川 しかもその時HEAVENに置いてるんだよ。NUMBER (N)INEがHEAVENの裏にあったのに(笑)。

清水 そのくらいルールも何も知らなくて。それでどこかのお店に行ったときに、「モノ見たらかっこいいから、君たちは吉祥寺に面白いお店があるからそこに持っていくといいよ」って紹介されたんですよ。それで案内されて。

荒武 初めて知った(笑)。



児玉 俺も初めて聞いた。誰に紹介されたの?

清水 全然知らない裏原宿の店員(笑)。

堀川 だって俺たち最初はHIPHOPのお店でブレイクしたんだよね。ゴリゴリのOllie系のお店で売れて。表紙とかにもなったんですけど、なんかちがくね?ってなって33に行ったんですよね。

児玉 あの当時ってTシャツとかどうやってプリントしてたの?

清水 自分たちでやってたよ。

児玉 えーっ!?自分たちでやってたの?

清水 そうそう、自分たちで刷ってた。それでLiftの話もあるじゃん。

堀川 Liftで100枚納品したんだけど、70枚返品されたの。汚いっていって。

清水 なんか味が理解される時代じゃなくて。



堀川 かすれがいいとか一切なかった。

児玉 B品扱いされちゃったんだ。

清水 実家で3日ぐらいかけてすったのにね。

堀川 油性でだよ。

清水 なんでかそれがイケてると思ってやってたよね。でもかっこよかったのよ。

堀川 生成りでね。それでNUMBER (N)INEの宮下さんに「これ絶対かっこいいじゃん」って言われてやったんだよね。

児玉 それで返品されたやつを33に持ってったんだ(笑)。

清水 言われてみれば持ってったと思いますね、新作できましたとか言って(笑)。

堀川 Liftって入ってるのに(笑)。

清水 うちの実家の下の駐車場でこいつ(堀川)と二人で刷って。だんだん上手くなってきたよねとか言って(笑)。

堀川 Tomatoが出始めだったから、荒れた感じがかっこいいと思ってたんだよね。

児玉 荒れた感じがするんじゃなくて、荒れた感じしか出ないんじゃない(笑)?

堀川 いやいやいや、根詰まりしてかっこいいねとか本当に言ってたの。全部違うっていいよねとか(笑)。



清水 それが受け止められない時代だったんだよね。

堀川 でも納品した分はすげー早く売れた。畳んで、タグまで自分たちでつけて、袋入れて(笑)。ベーキングマシンも買ったんだよ。焼付の。

清水 版も自分たちで作ろうとしてたんだよね。全然出来なかったんだけど(笑)。

児玉 立ち上げ当時はそんな感じだったよね。ウチは仲の良かったプリント屋さんにお願いしてたんだけど、厚塗りプリントとか新表現の実験も色々付き合ってくれて、シルクプリントを50回くらい重ねて立体プリントにしてもらったり。でもすごい効率が悪くてプリント屋さんには迷惑かけちゃってね。

清水 未だにあそこまで厚塗する業者いないじゃん。せいぜいあの三分の一ぐらいで。あの厚みはすごかったね(笑)。

児玉 あの時はプリント工場で厚塗りプリントの完成を横で見ながら「すげー。やばいよこれ!」と思って(笑)。

清水 エッジが立ってるのは大事だからね、角が立ってないと意味がないから(笑)。

児玉 確かその厚塗プリントを多用したシーズンのASYURAの展示会に堀川くんが来てくれて、その後珍しく堀川くんがうちの事務所に遊びに来たんだよね。その時にNU/KEとASYURAで一緒にやらないかって話をもらって、N/Aが始まったんだよね。それでウチもパンツとかジャケット作りたいって相談したら、俺に任せろって。それから ASYURAもフルアイテム作るようになった。堀川先生のおかげなんです。

堀川 見たかったんだよ、ASYURAがTシャツ以外のものを作るのを。そしたら(清水から)落ち着けと(笑)。

清水 愛がすごすぎてやっちゃう事があるんだよね(笑)。こっちのプラスも考えないとダメだよって(笑)。

堀川 愛を押し付け過ぎちゃってね、やりすぎたなと(笑)。

児玉 すごい愛を感じたよ。ありがとう(笑)。



堀川 あのとき山田くんが蛇腹のフード作ってたじゃない?

児玉 あったねー。あれは斬新なデザインでかっこよかったんだけど、初めての洋服づくりだったから生地のこともわからなかったし、裏地も指示してなかったし、縫い目の処理もしてないみたいな状態でさ(笑)。そんな品質だったのにデザイン凝りすぎたから売値が58000円みたいになっちゃって。「これは売れんな」ってヘコんでたもん(笑)。

清水 今思えば58000円に裏地つけて72000円位で売っても良かった気もしたけどね。

児玉 品質に自信が持てなかったから強気にはなれなかったね。

清水 でもそう、昔は本当に5200円の大台に乗せてたって感じのところを今は違うからね。

児玉 さっきも話でたけど、当時はうちにライバル意識むき出しだったよね(笑)。うちが4800円でTシャツ出したらNU/KEは5200円で出してて(笑)。

加藤 普通安くしますよね(笑)。

清水 値段上げて、お前らにこれができるのかって(笑)。よくネームとかつけてたじゃん、俺たち。その辺で価値観を上げたがってたんだよね。今でも付属とかを凝るのもそういう感じで。

児玉 付属やネームとかのグラフィックの入れ方とかは変わってないよね。

清水 そうだね、今のラインもやっぱりNU/KEっぽいね。

加藤 でもこういうデザインもすっと受け入れられる時代になったなって思いますね。

児玉 やっぱりかっこいいもん。



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Photographed by Kei Murata

Vol.4は8/11(日)更新予定です。

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