20年前、下北沢のクラブZOOの頃のお話

2011年5月28日 18:51

こんにちは、DJのQ'HEYと申します。

かれこれ20年程DJを続けています。
現在は西麻布のelevenでレギュラーパーティー「REBOOT」を開催し、新木場ageHaではモンスターテクノパーティー「CLASH」との共催で「CLASH x MOON AGE」というのをやったり、毎年夏になるとビーチ・パーティー「Maniac Beach」や野外フェス「Metamorphose」などに毎年出演していたります。

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ずっとテクノDJとして活動していますが、始めた当初はロックがメインでした。もっと前のことを言えば、最初にターンテーブルを手にしたのはヒップホップでの2枚使いやアカペラを混ぜたミックス作業やハウスでの繋ぎに興味を持ったからだったんですが、当時はあくまでも趣味。音楽的にはロックが好きだったので、あまりのめり込めませんでした。でも80年代末?90年代初頭のセカンド・サマー・オブ・ラブというムーブメントの影響で、マンチェスターを中心としたロック・バンドがハウス・ミュージックのビートを取り入れてダンサブルになったマッドチェスター・ムーブメントが起き、自分の好きなロックをターンテーブルでビート・ミックスできるようになった時「オレのやるべき事はこれだ!」と開眼して、毎日レコードを漁ってはミックスしまくって、クラブにも通い、そしてクラブでDJすることを夢見るようになりました。

初めてのクラブでのDJは渋谷La Duc

初めて人前でDJをやったのは、渋谷にあったLa Ducという、ちょっとディスコっぽいクラブでした。BEAMSの向かいのビルの地下です。夕方の貸切イベントだったんですが、レジデントDJのチャーリーさんが来て、平常営業時間になっても「もう少し回してて」と言い、ボクを残してレコード屋に行ってしまいました。もちろん喜んで回し続けましたが、そのうち手持ちのレコード回しきっちゃって同じのまたかけたりとか。

吉祥寺Hustle

この頃アンダーグラウンドな小箱クラブで好きだったのが、下北沢のZOOと吉祥寺のHustle。自分の企画をHustleというクラブに持ち込んで「Barealic Garden」というイベントをやらせてもらうことになりました。ZOOは自分の中では少しハードルが高かったので。Hustleでは当時大阪のKihira Noakiが月イチ土曜の「Warsow Night」に出ていたり。

ボクのイベントBarealic Gardenの初回は、木曜にもかかわらず150人を超す大盛況でとなり、店側からレギュラー化の承認が出て、ここがボクにとっての最初の拠点となりました。

下北沢ZOO

ZOO(後にSLITSに改名)は小沢健二、小山田圭吾、カヒミカリイも頻繁に出入りし、スチャダラパー、東京ナンバーワンソウルセット、ラヴ・タンバリンズなど、日本のクラブ/ポップミュージックを代表するアーティストを数多く輩出した、下北沢の伝説的クラブです。このハコにまつわる150人の証言集が「ライフ・アット・スリッツ」という本になっているので、興味のある方は是非ご一読を。

ZOOでは毎週木曜開催の「DU27716」というイベントがありました。DJはYASS、EMMA、瀧見憲司、TKDというメンツで、EMMAと瀧見くんが一緒に毎週やってたというのは、今考えると面白い話です。

ボクはこのイベントが大好きでしょっちゅう行ってたんですが、ある日DJゴングショーというDJのコンテストみたいなのがあるということで、ボクも薦められて出てみることにしました。

2週に渡る企画で、ボクは決勝まで進んだんですが、決勝戦の結果は優勝者ナシ。でも帰り際にYASSさんに「来週レコード持ってきなよ」と言われて、次の週から何となくレギュラーのDJにおさまることになりました。しかし前述の本「LIFE AT SLITS ライフ・アット・スリッツ」によると、このゴングショーは出来レースだったかのような記述がありビックリ。そんな話、本が刊行された2007年までの約15年間知らなかったっつーの(笑)

確かにゴングショーの企画の随分前からボクはDU27716の中で一番カッコイイと思っていたDJ TKDにデモテープを渡していて、その時点で結構いい評価をもらってはいましたが...

とにかくこうして憧れの舞台に立つことができるようになり、このZOO(SLITS)での活動が大きな一歩となりました。数々の思い出がこのハコにはあります。

 

ZOOでDJを始めたのは確か1991年頃。プライマル・スクリームのアルバム「スクリーマデリカ」がリリースされた年です。その年、プライマルは川崎クラブチッタでライブをやりましたが、その前後辺り、いつものようにZOOのエントランスでダベってたらボビー・ギレスピーがふらりと遊びに来たのです。ドアが開いて顔見た瞬間ボクは「え!?」って固まって、「どうぞ」って中に招き入れてました。ドアマンでもキャッシャーでもないのに(笑)

100人も入れば満杯になるような小箱ですが、こんな感じでインディ・ロックやハウス・シーンのアーティストには、東京でいい音楽がかかっているクラブと言えばZOOという認識があったようです。シャック(元ペイル・ファウンテンズ)のマイケル・ヘッドやビーツ・インターナショナルのノーマン・クック(言わずと知れたファット・ボーイ・スリム)が来たり。

ジ・オーブのアレックス・パターソン

印象深かったのはジ・オーブのアレックス・パターソンがプレイした時。

連れの外人集団も来て超盛り上がる中、アレックスはテンポが全く合ってない状態でもクロスフェーダーでガチャガチャスイッチングしての大暴れ。20?30分おきに最前列の外人から口にエクスタシーを放りこまれての大狂乱。

ボクはそんな様子を唖然と見つめながらアレックスの横に立ってたんですが、うっかりビールのグラスを倒してしまい、彼が横に置いていたレコードの盤面をビールまみれにしちゃいました。

「やっべー」と思い、店のスタッフにダスター持ってきてもらうよう頼んだんですが、それを見たアレックスは涼しい顔して「無問題」とばかり手のひらをこちらに向け、ビールまみれのレコードをそのままレコードボックスにしまいました。あれどう考えても、後でジャケットの紙がくっついてカピカピになってるよ...

数年後FUJI ROCK FESTIVALにボクが出た際、アレックスもいたので「ちょっと謝っておきたいことがあるんだけど、ずっと前にアレックスのレコードの上にビール...」まで話したら「ノーノーノー聞きたくない!」と両耳を押さえ「ギグの後に恐ろしくコンディションの悪いレコードがちょいちょいあるんだよ!なんでか知んないけど!」って言ったのでした。(笑)

808 STATEが遊びに来てくれた時は、ちょうどボクがDJプレイ中で、「彼のDJはロンドンでも通用する」と言ってたというのを聞いて大喜び。しかしその後20年近く経った今まで、ヨーロッパ各地でDJする機会はありますが、ロンドンでは一度もでプレイする機会に恵まれていません(笑) 

 

アンディー・ウエザーオール

この時代のボクのヒーローと言えばアンディー・ウエザーオール。前述プライマル・スクリームの「スクリーマデリカ」のプロデューサーとして成功をおさめたDJですが、とにかくこの人こそがロックとハウス/テクノの融合を誰よりもかっこ良く成し遂げた人です。ボクは彼が関わった作品全てを毎回鳥肌を立てながら聴いていて、ボクの音楽的志向を決定づけることにもなり、言うなれば彼のお陰でDJになれたのでした。

当時は今のように日本のシーンも大きくなく、外国のDJを招聘するということがあんまりイージーじゃなかった時代。アンディーの来日はなかなか実現しませんでしたが、数年後新宿リキッドルームでやっと会うことができ、「あなたのお陰でDJになれました」というボクの思いを伝えることができました。すると彼は笑って「Sorry, It's my fault. (ごめん、そりゃオレが悪かった)」って...

かっこ良すぎですよ。

ボクはリットーミュージックから「GROOVE presents DJ MIX STYLE 」というDJ教則DVDを2003年に出してます。

当時はコスリ系の教則DVDはありましたが、ハウスやテクノのロングミックスのテクニックを紹介したものが全然無くて、このDVDはかなり売れた模様です。今でも全国各地にDJで出かけると「昔あのDVDで勉強しました!」って言われる事がよくあります。

そういうタイミングでボクの口からは「ホントに!?嬉しいね!」という答えしか出てきません。「あーそりゃ悪いことしちゃったね」っていう言葉出てこないなあ。

今度トライしてみたいけど、多分無理だ。

 

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吉祥寺 ハモニカ横丁  2011.5.27 8:30PM
Photographed by Kei Mrata

着用のT-shirtsはGio-Goi TEPPEE

DJ Q'hey

「MOON AGE RECORDINGS」主宰。東京でハードテクノの代名詞的存在とも言えるパーティー「REBOOT」、新木場ageHaにおいてレーベルパーティー「MOON AGE」をオーガナイズ。1989年よりDJ活動を開始して以降、日本のテクノシーンをリードする存在として常に最前線で活躍。国内最大級野外フェスティバル「METAMORPHOSE」に毎回出演を果たし、アジア、ヨーロッパ諸国でプレイする機会も多い。1995年から楽曲のリリースを開始し、2006年アルバム Q'HEY + REBOOT 「ELECTRIC EYE ON ME」をリリース、全国ツアーを開催。ミックスCDにおいては「SOUND REPUBLIC」「REBOOT #001」(共にKSR)「NYSO VOL.1:DJ Q'HEY」(YENZO MUSIC)の3枚を発表している。
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